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最高裁判例 調査官解説批評review


補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律22条に基づくものとしてされた財産の処分の承認が同法7条3項による条件に基づいてされたものとして適法であるとされた事例
(令和3年3月2日第三小法廷判決 民集75巻3号317頁)
綱森 史泰(札幌弁護士会)

1 本批評の対象等

 本稿が批評の対象とするのは、標記最判(以下「本判決」という。)についての荒谷謙介調査官(本判決の当時)による解説(以下「本解説」という。)である。荒谷調査官は、平成29年4月1日に最高裁行政調査官を任ぜられる前は東京地裁民事第3部(行政専門部)におり、本判決後、令和3年4月1日から最高裁行政局第一課長兼広報課付を任ぜられている。

2 本判決の事案及び判断の概要

(1)事案の概要等

ア 農林水産大臣から委任を受けた関東農政局長は、平成18年1月18日までに、X(栃木県−被上告人)に対して、平成17年度バイオマスの環づくり交付金のうちのバイオマス利活用整備交付金として、合計2億6113万8000円の交付決定をした(「本件交付決定」)。
 本件交付決定には、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(「法」)7条3項(各省各庁の長が補助金等の交付決定をする場合、同条1項及び2項の規定に定める条件のほか、各省各庁の長が法令及び予算で定める補助金等の交付の目的を達成するため必要な条件を附することを妨げるものではない旨を規定している。)により、交付事業者であるXは、「間接交付事業者に対し事業により取得し、又は効用の増加した財産の処分についての承認をしようとするときは、あらかじめ関東農政局長の承認を受けなければならない」との条件(「本件交付条件」)が付された。
 Xの知事(「県知事」)は、同日までに、間接交付事業者である宇都宮市(「市」)に対して平成17年度バイオマスの環づくり事業費補助金として、市長は間接交付事業者である株式会社エコシティ宇都宮(「エコシティ」)に対して宇都宮市バイオマス利活用補助金として、それぞれ本件交付決定と同額の交付決定をした。
 XはY(国−上告人)から本件交付決定による補助金が交付された都度、市に対して補助金を交付し、市はその都度、エコシティに対して補助金を交付した。

イ エコシティは、上記の補助金を主要な財源として堆肥化施設(本件施設)を整備・設置した。
 平成18年6月8日、関東農政局長はXに対し、Xは市に対し、市長はエコシティに対し、それぞれ申請を受けて本件施設を担保に供することを承認し、エコシティは、同年8月10日、本件施設に根抵当権を設定した。

ウ エコシティは、平成20年10月、本件施設での操業を停止した。本件施設について、平成21年12月25日、担保不動産競売が申し立てられ、同22年1月20日に開始決定がなされた。
 本件施設について、平成23年5月13日までに、エコシティは市長に対し、市は県知事に対し、Xは関東農政局長に対し、それぞれ財産処分に係る申請をした。Yがした申請(「本件申請」)に係る申請書には、本件申請が法22条(補助事業者等は、補助専業等により取得した財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない旨を規定している。)に基づくものである旨の記載があり、本件施設の処分区分として「目的外使用(補助事業を中止する場合)」と記載された。
 関東農政局長は、同月17日、本件施設の処分価格に係る国庫補助金相当額の納付を条件(「本件附款」)として、本件申請を承認した(「本件承認」)。県知事は、同月18日、上記の市による申請を承認し、市長は、上記のエコシティによる申請を承認した。 本件施設は、 同年9月29日、担保不動産競売手続により売却された。

エ Xは、平成24年1月27日付けで、関東農政局長から上記の国庫補助金相当額として1億9659万0956円の納付を求められ、同年2月15日、Xに対し、同額を納付した(「本件返納」)。

オ 第1審判決(宇都宮地判平成31年3月7日)は、法22条に基づきなされた本件承認には根拠法を誤った瑕疵があるが、法7条3項を根拠としてなされたものと読み替えること(いわゆる違法行為の転換)が認められるとした。その上で、本件承認の対象は、本件不動産の担保権実行による所有権の移転であると認められるところ、担保権実行には担保権設定者の意思は介入せず、関東農政局長がXに対してした本件施設を担保に供することの承認は担保権の実行も含めたものであるというべきであるから、本件承認は不必要なものであり、法的に不存在なものと評価されるとした。そうすると、本件承認に付された本件附款を根拠とする関東農政局長による納付命令もまた法的に不存在であるとして、XのYに対する本件返納金相当額の不当利得返還請求の全部を認容した。
 原判決(東京高判令和1年12月5日)は、第1審判決とは異なり、本件承認前の打合せ・交渉経過中においてYの担当者がXの担当者に対して法22条の適用がある旨を伝えていたなどの経緯に鑑みると、本件承認の根拠条文の記載は誤記載というべきものではなく、無効行為の転換の理論により、本件承認を法的根拠のある行政行為とみることはできないとした。また、本件承認の対象については、第1審判決と同様、本件不動産の担保権実行による所有権移転であったと認められるとした上で、法22条における承認の対象は「担保に供」することであり、担保権実行については承認の対象とはならないことから、本件承認は、法的根拠を欠くものであり無効であるとした。以上によると、本件承認は、法的根拠を欠くものであり、その瑕疵は重大かつ明白であるから、取り消すまでもなく無効であり、本件承認に付された本件附款も法的根拠を欠くものとして無効であるから、本件承認及び本件附款が有効であることを前提としてなされた関東農政局長による納付命令も法的根拠を欠き無効であるとして、第1審判決と同様、XのYに対する本件返納金相当額の不当利得返還請求の全部を認容すべきものとした。
 Yは、上告受理申立てをし、本件は上告審として受理された。上告理由(排除されたものを除く。)の要旨、原判決には、@本件承認は、本件施設の目的外使用を対象としてなされたものであるにもかかわらず、その対象を本件施設の担保権実行による所有権移転であるとした点で本件承認という行政行為の解釈の誤りがある、A本件承認については、法22条ではなく法7条3項を根拠とするものと読み替えることにより有効と考えられるにもかかわらず、そのように解さなかった原判決には法令解釈の誤りがあるというものである。

(2)判断の概要

 本判決は、要旨、以下のとおり判示し、全員一致で、原判決を破棄し、第1審判決を取り消した上で、Xの請求を棄却する判決をした。なお、宇賀克也裁判官の補足意見がある。

ア 本件承認の対象について

 「関東農政局長がXに対して当初の本件施設への担保権設定について承認するに際し、その後に担保権が実行され、 エコシティが補助金の交付の目的に沿ってこれを使用することができなくなり、目的外使用の状態に至ることについてまで承認していたとはうかがわれないから、本件交付決定条件により、上記目的外使用についても改めてその承認を得ることが必要であったというべきである。そして、本件承認は、処分区分を「目的外使用( 補助事業を中止する場合)」とする本件申請に対してされたものであって、本件施設の目的外使用を対象としてされたものと解される」、「したがって、 本件承認は、法7条3項による本件交付決定条件を根拠としてされたものとすることができるのであれば法的根拠を欠くものということはできない」。

イ 本件承認が法7条3項による本件本件交付決定条件を根拠としてされたものと読み替えることの可否について

 法22条は、「補助事業等により取得された財産が処分され、補助事業者等により補助金等の交付の目的に沿って使用されなくなる事態となっては、当該目的が達成し得なくなるために設けられたもの」であり、同条に基づく承認は、「これを得ることなく上記の事態に至ることを防止することを目的とするものである」と解されるところ、「法22条に基づく承認と法7条3項による本件交付決定条件に基づく承認は、その目的を共通にするものということができる」。
 「法22条に基づく承認に際しては、補助事業者等において補助金等の全部又は一部に相当する金額を納付する旨の条件を附すことができると解されるのと同様に、法7条3項による本件交付決定条件に基づく承認に際しても、仮に当該承認を得ていなければ本件交付決定の全部が取り消され得ることなどからすると、Yにおいて交付された補助金の範囲内の金額を納付する旨の条件を附すことができると解される。そうすると、法22条に基づいてされた本件承認を法7条3項による本件交付決定条件に基づいてされたものとすることは、Xにとって不利益になるものでもない」。
 「X及び関東農政局長において、仮に法22条に基づいて本件承認をすることができないという認識であった場合に、これと目的を共通にする法7条3項による本件交付決定条件に基づく承認の申請及び承認をしなかったであろうことをうかがわせる事情は見当たらない」。
 「以上に検討したところによれば、本件承認は、法7条3項による本件交付決定条件に基づいてされたものとして適法であるということができる」、「そして、上記のとおり、法7条3項による本件交付決定条件に基づく承認に際しては、Xにおいて交付された補助金の範囲内の金額を納付する旨の条件を附すことができると解されることからすると、本件承認に際し、交付された2億6113万8000円の範囲内である国庫補助金相当額の納付を条件とする旨の本件附款を附すことができるのであり、その他これを附すことができないことを根拠付ける事情はうかがわれないから、本件附款も無効であるとはいえない」、「そうすると本件返納は、本件附款に基づく納付義務の履行としてされたものであるから、法律上の原因を欠くものということはできない」。

3 本解説の概要及びコメント

(1)本解説の概要

 本解説は、「第1 事案の概要等」において上記2のような事案の概要等を紹介した上で、「第2 説明」中において、「1 本件承認、本件附款、これに基づく納付の求め等の法的性質等」、「2 本件承認の対象」、「3 違法行為の転換」、「4 補足意見」、「5 本判決の意義等」の5つの項目について解説を加えている。
 以下、各項目について解説の概要を紹介した上でコメントを付する。

(2)「1 本件承認、本件附款、これに基づく納付の求め等の法的性質等」について

ア 概要

(ア)法について

 本解説は、まず、法の仕組み等に関し、法が、国が直接交付する補助金等と国以外の者が補助金等を財源として交付する間接補助金等を区別して規定した上で、国と補助事業者等(補助金等の補助金等の交付の対象となる事務又は事業を行う者をいう。本件ではXがこれに当たる。)との間の関係を規制することを建前としており、間接補助事業者等(間接補助金の対象となる事務又は事業を行う者をいう。本件では市及びエコシティがこれに当たる。)については原則として補助事業者等を通じた間接的な規制の対象とする仕組みを採用しているところ、間接補助事業者等も実質的には国から直接補助金等の交付を受ける者と異ならないことから、実務上は、補助事業者等が間接補助事業者等に間接補助金等の交付決定をする際には、国が補助事業者等に対して法7条に基づき課す補助条件に相当する間接補助条件を付しておく必要があるとされていることを指摘する。
 次に、本解説は、法22条に基づく各省各庁の長の承認の意義等に関し、同承認は、補助金等の交付目的に反した使用等の禁止を解除する効果を持つ独立の行政行為であり、講学上の許可に相当するものであるところ、明文はないものの「行政の弾力的対応」のため国庫補助金相当額の返納を条件とする承認が禁止されているとは解し難いことや、承認を得ずに補助金等の交付目的に反した使用等がなされた場合には、法11条の事業遂行義務に対応して定められた法17条により交付決定が取り消され、法18条による返還命令がなされ、補助金等の全額につき高率の加算金及び延滞金が付された上で強制徴収の対象となり得ること(法19〜21条)などからすれば、同承認に当たり「補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すること」等の条件(講学上の附款のうち「許認可等を行うに際して、法令により課される義務とは別に作為又は不作為の義務を課す負担」に当たるものと解される。)を付すことも許容されるとしている(なお、注8では、仮に承認に付された条件に不服があれば、承認自体又は附款である条件について、地方公共団体にあっては法25条による不服の申出、それ以外の者にあっては審査請求や取消訴訟の提起をなし得ることも指摘されている。)。
 また、本解説は、法22条は、国と補助事業者等との関係についての規定であるが、間接補助事業者等にもこれと実質的に同一の規制を及ぼす必要があることから、国が補助事業者等に補助金等の交付決定をするに当たっては、補助事業者等が間接補助事業者等に間接補助金等の交付決定を行う際に「間接補助事業等により取得し、又は効用の増加する財産の処分については、補助事業者等の承認を受けるべき」旨の間接補助条件を付さなければならない、という補助条件を付すことが必要であるとされていることを指摘する。

(イ)本件承認の根拠

 本解説は、法22条は、上述のとおり国と補助事業者等の関係を規律するものであるから、間接補助事業者等であるエコシティが本件施設を処分する際には適用されないが、本件交付決定には法7条3項に基づく本件交付決定条件が付されているから、交付事業者であるXは、間接交付事業者である市からエコシティによる財産処分の承認を求められた際には、本件交付決定条件に基づき同承認について関東農政局長の承認を受けなければならないことになるとし、本件承認は、本来は法22条に基づくものとしてではなく、本件交付決定条件に従いなされるべきものであったとする。

(ウ)本件承認の法的性質、本件附款の許容性、これに基づく納付の求めの意義等

 本解説は、本件交付条件は、補助事業者であるXがY(関東農政局長)の承認を得ずに間接補助事業者等に対して財残処分の承認をすることを禁止する効果を持つものであり、本件承認は、法22条による承認と同様に、禁止の解除の効果を持つ独立の行政行為に当たり、行政処分としての性質を有すると考えられるとする。その上で、先述のとおり、法22条による承認の際に「補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すること」の条件を付すことができると解されており、間接補助条件として補助条件と同旨の条件を付すべきことを補助条件とすることができると解されていることからすると、本件交付決定条件に従いなされる本件承認に際しても補助金相当額のYへの納付を条件とするという本件附款を付すことができると考えられるとする。
 Xが原審までに本件附款の違法、無効を主張していた点に関し、本解説は、仮にXが本件承認を得ずに市からなされたエコシティによる財産処分の承認の求めを承認したとすれば、本件交付決定が取り消されることも考えられ、その場合になされる返還命令においては高率の延滞金が付され、高率の加算金をも付され得るものであり、強制徴収も可能であることからすれば、交付された補助金等の範囲内で特別の手続によらずに補助金等相当額を返納させる本件附款が違法、無効であるとは解されないことを指摘する。
 また、本判決は、本件承認に付された本件附款は、これによりXに対し補助金相当額のYへの納付義務を課すものであり、その後になされた関東農政局長による納付の求めは、納付義務を発生させるものではなく、行政処分に当たらないとする。

イ コメント

  上記ア(ア)で述べられている法の仕組み等についての理解は、本判決の判示中には現れていないが、その前提となるものと解される。その内容は、本解説が引用する法の解説書(小滝敏之『補助金適正化法解説(全訂新版増補第2版)』及び青木孝徳編『補助金等適正化法購義』)が述べるところに沿ったものであり、法22条による承認に当たり「補助金等の全部又は一部に相当する金額を国に納付すること」等の条件(負担)を付すことが許容される旨を述べる点も含めて、大きな異論はないものと考えられる。また、同(イ)についても、同(ア)を前提にすると特に異論はないと思われる。
 同(ウ)については、法22条に基づく承認が同法を根拠とする交付決定とは独立の行政処分であると解されるとしても、本件交付決定条件という附款に基づく承認が(独立の)行政処分であると解し得るかが問題となるところ、本解説の注11は、「本件承認は、直接には、本件交付決定条件という本件交付決定に附された附款に基づくものであるが、当初の行政処分である本件交付決定中の附款である本件交付決定条件により承認が必要とされていた事項について、承認がされたこととするという変更をするものとして、行政処分の性質を有すると説明することができよう」としている。附款によって任意の行政処分を創出し得るものとは解されない(第1審判決の評釈である碓井光明・地方財務786号130頁〔143頁〕は、「附款によって納付命令という行政処分を創出できると解するには無理がある」ことを指摘する。)としても、本件承認については、本件交付決定中の附款である本件交付決定条件の一部変更とみられるものであることからすれば、法7条3項を根拠とする、本件交付決定とは独立した行政処分と解することができる旨をいうものと解される(原判決の評釈である田中孝男・行政法研究37号217頁〔230頁〕も、法7条3項の条件として一定の場合に各大臣の承認を受けるべきことを定めることは当然に想定され得るものであり、この場合の承認は交付決定と不可分のものではないから一つの独立した行政行為となると考えられる旨を指摘していたところである。)。その上で、進んで、本件承認という行政処分にも法22条に基づく承認と同様に補助金相当額の返納という条件(負担)を付すことができるかが問題となるが、本解説が述べるところからすると、法22条に基づく承認の場合と異なりこれが許容されないと解すべき理由はないということになろう。
 本解説が、XのYに対する納付義務は本件附款により課されるものであり、その後に関東農政局長した納付の求めは、納付義務の発生根拠となるものではなく、行政処分にも当たらない旨を述べた点は、第1審判決及び原判決が同納付の求めを「木件納付命令」と定義し、「本件納付命令」が本件返納についての法律上の原因となり得るものであるかのような判示をしていたこと(本解説の注4参照)から、注意的に指摘したものであろう。


(3)「2 本件承認の対象」について

ア 概要

(ア) 本解説は、法22条及び本件交付条件に基づく承認の対象に関し、同承認は、補助金等により形成された財産について、各省各庁の長の承認を得ることなくその処分がされることを防止し、もって補助金等の交付の目的が完全に達成されるよう特に配慮する趣旨のものであるとした上で、同承認は、補助事業者等において補助事業等により取得した財産について補助金等の交付の目的に沿って管理等をすべき義務(このような義務の存在は、補助事業者等が法22条の規定に違反して補助目的外の財産の処分を行ったときは、法11条の事業遂行義務に対応する法17条1項及び3項の規定に基づき交付決定が取り消されることとなることからも裏付けられるとされる。注12参照)を解除する効果を持つものであって、補助金等又は間接補助金等により整備された財産の処分の民事上の効果の有無に関わるものではないとする。
 その上で、このような承認の効果からすると、その対象は、補助事業等により取得した財産を補助事業者等において補助目的に沿って管理しなくなることであり、法22条の「補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供し」とは、その具体例として挙げられているものであると解され、また、そのような状態の発生について担保権設定者である補助事業者等の意思が介在するか否かは重要ではなく、担保権実行による場合も、これにより補助事業者等が対象物件の所有権を失い補助目的に沿った使用ができなくなるため、承認を要するものと考えられるとする。

(イ) 本解説は、以上のことを踏まえた上で、本件承認は、法22条ではなく、法7条3項による本件交付決定条件に基づきなすべきものであったところ、法22条を根拠とする承認については担保権実行の際になされたものであっても所有権移転ではなく目的外使用を対象とするものと解釈し得ることに加え、本件交付決定条件においては法22条のように承認を要する場合を具体的に挙げていないこと、本件申請に係る申請書に処分区分につき「目的外使用(補助事業を中止する場合)」との記載もあったことからすると、本件承認は、本件施設の目的外使用を対象としてなされたものと解釈されるべきであるとし、これを担保権実行による所有権移転であるとした原判決は行政行為の解釈を誤ったものであるとする。


イ コメント

  後述のとおり、本判決は、違法行為の転換を認めた事例判決として先例的価値を有するものであるが、本件において第1審判決及び原判決と本判決とが結論を分けるに至った実際上の大きな対立点は、本件承認の対象をどのように理解するかにある。 この点、原判決は、本件承認の対象は、本件不動産の担保権実行による所有権移転であったと認定した上で、担保権設定者の意思が介在しない担保権実行による所有権移転は法22条あるいは本件交付決定条件に基づく承認の対象とならないものと解されることから、本件承認は、その対象を欠いた無効なものであると理解した。このような理解によると、本件承認は、仮に違法行為の転換により法7条3項による本件交付決定条件を根拠とするものと読み替えることが認められるとしても、結局、その対象を欠くものとして無効であるということになると思われる(第1審判決参照)。本解説でも触れられているとおり、本判決以前には、担保権設定者の意思が介在しない担保権実行は法22条による承認の対象とならないとする原判決のような理解を支持する見解が多かったと思われる。
 これに対し、本判決は、「本件承認は、処分区分を『目的外使用(補助事業を中止する場合)』とする本件申請に対してされたものであって、本件施設の目的外使用を対象としてされたものと解される」として、原判決とは異なる理解を示したものであるが、法廷意見は、その理由の詳細を述べていない。本解説が本件承認の対象について上記アのとおり述べているところは、法廷意見が上記のように解した理由を敷衍したものと解される。
 上記ア(ア)で本解説が述べているとおり、法22条に基づく承認を得ずにこれに違反した財産の処分がなされた場合に法17条の規定に基づき交付決定が取り消され得る仕組みが採られていることからすると、法22条に基づく承認は、このような交付決定の取消しの前提となる、補助事業者等において補助事業等により取得した財産について補助金等の交付の目的に沿って管理等をすべき義務を解除する効果を有するものと解することができる。そうすると、その承認の対象も、そのような効果に対応して、補助事業等により取得した財産を補助金等の交付の目的に沿って管理をしなくなることであると捉えられることになる(なお、注14の検討内容からすると、「目的に沿って管理をしなくなること」一般が包括的に承認の対象となるという趣旨ではなく、目的に沿って管理をしないこととなる、目的外使用、譲渡、交換、貸付、担保供与等の具体的な行為ないし状態が承認の対象となるという趣旨と解される。)。このような理解によると、担保権設定者の意思が介在しない担保権実行の場合であっても、これによって補助事業者等が対象物件の所有権を失い(なお、本解説は、担保権実行が手続に従ってなされた場合には承認の有無にかかわらず所有権は移転するものと考えられるとし、承認はそのような民事上の効果の発生に関わるものではないとする。その理由について注12参照。宇賀裁判官の補足意見も同旨を述べており、正当な理解であると考える。)、目的外使用の状態を生ずることとなるから、その目的外使用について法22条の承認が必要であると解されることになる。以上は、「担保に供」することのみを対象とするかのような法22条の文言から素直に導かれる解釈ではない(本解説の注15によると、農林水産省においては担保実行の際に承認を要するものとされていたが、他の省庁においては必ずしもそのような運用がなされていたわけではなかったようである。)が、法の仕組み及び承認の効果に着目した解釈として正当なものであると考えられる。法22条の承認の対象についての以上のような理解を前提にすると、上記ア(イ)のとおり、本件承認の対象についても、申請書に記載のとおり、「目的外使用(補助事業を中止する場合)」であると解するのが素直であり、そのように解釈されることになろう。本判決の「本件承認は、処分区分を「目的外使用(補助事業を中止する場合)」とする本件申請に対してされたものであって、 本件施設の目的外使用を対象としてされたものと解される」との判示は、以上のような検討の結論を端的に示したものと解される。
 本解説の注14は、本件承認の対象について以上のように解されるとしても、担保権設定の際の関東農政局長による承認に将来の担保権実行に伴う目的外使用に対する承認の趣旨も含まれていたとするならば、担保権実行の際に改めて承認を要することとはならないであろうとしつつ、XY間でそのような問題提起がなされた経過が窺われないという事実経過に照らすと、担保権設定の際の承認が将来の担保権実行に伴う目的外使用を含めてなされたものとはいい難いとする。この点、第1審判決は、担保権設定の際の関東農政局長による承認は担保権の実行も含めたものであったとし、担保権実行についての本件承認は不必要なものであって法的意味がなく不存在であると判断していた。本解説は、上記のような場合に本件承認がその対象を欠くものとして無効ないし不存在となるものと解すべきかについては論じていないが、本件がそのような場合ではなかったために敢えて言及しなかったものと思われる。本判決の「関東農政局長がXに対して当初の本件施設への担保権設定について承認するに際し、その後に担保権が実行され、エコシティが補助金の交付の目的に沿ってこれを使用することができなくなり、目的外使用の状態に至ることについてまで承認していたとはうかがわれない」との判示は、以上のような検討に基づくものと解される。

(4)「3 違法行為の転換」について

ア 概要

  本解説は、本件承認は、法22条に基づくものとしてすることはできないが、法7条3項による本件交付決定条件に基づきなされたものであったといえるのであれば有効であると解されるところ、その当時においては法22条に基づくものとしてなされたものであることから、違法行為の転換として、法7条3項による本件交付決定条件に基づきなされたものとして有効であるといえるかが問題となるとする。
 本解説は、まず、違法行為の転換についての最高裁判例及び学説を検討し、最高裁判例には違法行為の転換を認めたもの(最大判昭和29年7月19日民集8巻7号1387頁、最二小判昭和29年2月19日民集8巻2号536頁)と認めなかったもの(最一小判昭和28年12月28日民集7巻13号1696頁、最一小判昭和29年1月14日民集8巻1号1頁、最二小判昭和42年4月21日集民87号237頁)とが存するところ、学説(山本隆司「違法行為の転換」『行政判例百選T〔第7版〕』176頁及び小早川光郎「処分の瑕疵と違法性」渡部吉隆ほか編『行政事件訴訟法体系』235頁を挙げる。)においては、違法行為の転換が認められるには、行政行為の内容に関して、1)転換前の行政行為と転換後の行政行為の具体的な目的が同一であること、2)転換後の行政行為の法効果が転換前の行政行為の法効果より、関係人に不利益に働くことにならないこと、3)行政庁が仮に転換前の行政行為の瑕疵を知ったとしても、その代わりに転換後の行政行為を行わなかったであろうと考えられる場合でないことを挙げるものがあり、これらは最高裁判例等を説明することができ、検討に当たり有用な指針となるものであるとする。
 その上で、本件について検討すると、1)法22条に基づく承認と法7条3項による本件交付決定条件に基づく承認は、その目的を共通にするものということができること、2)法22条に基づいてなされた本件承認を法7条3項による本件交付決定条件に基づいてなされたものとすることは、Xにとって不利益になるものでもないこと、3)X及びYの担当者は、間接補助事業者等との関係でも法22条が適用されると考えて本件申請及び本件承認をしたものと考えられるが、仮にこれが誤解であることを知っていれば、法7条3項による本件交付決定条件に基づき申請及び承認したものと考えられることから、本件承認は、その時点では法22条に基づきされているものの、法7条3項及び本件交付決定条件に基づきなされたものとして転換を認めることができるとする。
 なお、本解説は、本件承認における根拠条文の記載は誤記載というべきものではなく違法行為の転換により法的根拠のある行政行為とみることは相当でないとした原判決の判示について、誤記載であれば違法行為の転換を検討するまでもなく適法な根拠法条に従って行政処分をしたものと評価し得る場合もあると考えられる一方、誤記載でないときには違法行為の転換が一切認められないとはいい難いとする。

イ コメント

  宇賀裁判官の補足意見において整理されているとおり、本判決の法廷意見は、1)転換前の行政行為(法22条に基づく承認)と転換後の行政行為(法7条3項による本件交付決定条件に基づく承認)が目的を共通にすること、2)転換後の行政行為の法効果が転換前の行政行為の法効果より関係人に不利益に働かないこと、3)転換前の行政行為の瑕疵を知った場合に、その代わりに転換後の行政行為を行わなかったであろうと考えられる場合ではないことという3つの事情を勘案した上で、違法行為の転換を認めている。本判決は、違法行為の転換の要件等についての一般論を展開していないが、本解説によると、本判決の判示は、違法行為の転換の要件に関する学説の考え方を指針とする検討に基づくものであることが明らかとなる。
 その上で、本件についての検討として本解決が述べるところは、本判決の判示と同旨であり、特段これに付け加えるところはない。そのため、本判決が、上記の学説の挙げる要件を違法行為の転換の必要条件(ないし必要十分条件)であると解した上で本件ではこれらの要件が充足される旨を判示したものか、あるいは、違法行為の転換。を認めるか否かの判断に当たっての考慮要素として上記の学説の挙げる要件を参照したものであるのか(後掲船渡評釈41頁参照)や、行政と私人との間の法律関係が問題となる場合と本件のように国と地方公共団体との間の補助金交付関係が問題となる場合では転換の要件等に違いが生じ得るのか(前掲碓井評釈140頁、前掲田中評釈228頁参照)などの点について、本解説から理解の手がかりを得ることは困難である。
 本解説が根拠法条の誤記載の場合に違法行為の転換が一切認められないとは解されない旨を指摘する点は、違法行為の転換が、「当初、Aとしてされた行政行為が、Aとして必要な要件を欠いているためにAとしては違法であるが、Bの行政行為の要件は充足している場合、これをBとして存続させる」(宇賀克也『行政法概説T〔第7版〕』384頁参照)というものであり、根拠法条の誤記載を理由として当初からBという行政行為がなされたものと解するというものでないことからすれば、当然のことといえよう。なお、Yの上告理由申立て理由中には、本件承認は、法7条3項に基づく本件交付決定条件に根拠づけられる行政処分として有効に成立しており、根拠法上の誤記載はこれを左右しない旨を主張する部分があるが、受理決定において排除されている。本解説が「本件承認は、その当時において、法22条に基づくものとしてされたといえる」と述べるところからしても、本解説及び本判決が本件を根拠法上の誤記載が問題となる事例と捉えていないことは明らかである。

(5)「4 補足意見」について

ア 概要

 本解説は、本件承認の対象及び違法行為の転換についての宇賀裁判官の補足意見の概要を紹介している。

イ コメント

  宇賀裁判官の補足意見は、本件承認の対象と違法行為の転換の2点に関するものである。
 本件承認の対象に関する補足意見は、本件承認が、担保権の実行により間接補助事業者等が補助金等・間接補助金等により取得した財産を補助金等の交付の目的に従って使用することができなくなることを対象としてなされたものと解されるとするものである。その理由は、本解説が述べるところと概ね同旨であるように思われるが、本件承認の対象の確定に当たり、本解説が、財産を補助金等の交付目的に沿って管理すべき義務を解除するという本件承認の「効果」に着目しているのに対し、補足意見は、財産を補助金等の交付目的に従って管理する義務を免除するという「意図」に着目したものと解される点で相違がある。本解説には補足意見についての説明は付されていないことから、このような相違がどのような意味を有するのかは明らかでない。
 違法行為の転換の関する補足意見は、「法廷意見は、従前の当審の判例と整合するものであり、違法行為の転換が認められる場合を拡大するものでは全くない」とし、法廷意見が勘案した3つの事情は、「違法行為の転換が認められるための必要条件であるが、それが必要十分条件であるわけでは必ずしもないと思われる」とするものである。法廷意見がこのような理解を共有するものであるのか否かについても、本解説から理解の手がかりを得ることはできない。

(6)「5 本判決の意義等」について

ア 概要

 本解説は、本判決は、関連訴訟の住民訴訟では違法とされた本件返納につき、同訴訟とは異なり適法としたものであり、これによりXが補助金相当額を最終的に負担すべきことになったところ、Xが市に対して補助金の返還を求めた関連訴訟においてXの請求が棄却されたのは、担保権実行の際にXが市に対してした承認につき法的根拠がないとされたためであり、仮に、県知事による交付決定の際に承認を要する旨の条件を付し、これに基づく承認の際にXによる補助金相当額の返納を条件として付していれば、Xは市に対して補助金相当額を請求することができたのではないかと考えられると指摘する。他方、注16においては、現実には専ら国が主導して行われていた事業が頓挫したときに、いわば中間に入った都道府県や市町村が負担すべきとすることが制度の仕組みとして適正かについては制度論の観点から議論があり得ることも指摘する。
 また、本解説は、本判決は、違法行為の転換を認めたものとして、理論的にも実務的にも重要な意義を有すると考えられるとする。

イ コメント

 原判決が判示するように本件承認前の打合せ・交渉経過中においてYの担当者がXの担当者に対して法22条の適用がある旨を伝えていたなどの経緯があったことに鑑みると、違法行為の転換を認めることによって本件承認及び本件附款を適法なものであるとして、中間者として介在したに過ぎないXに補助金相当額を最終的に負担させることについては、一見すると落ち着きの悪さがあるようにも思われる。しかし、本解説が指摘するとおり、Xの市に対する補助金相当額の請求が認められなかった理由が、県知事が交付決定及びこれに基づく承認の際に必要な条件を付さなかったためであることからすると、上記のような結論もやむを得ないものと考えられよう。本解説の注16は、制度論の観点からは、専ら国の主導する事業が頓挫した場合に中間者である都道府県・市町村を最終的負担者とすることに議論があり得ることを指摘しているが、これは調査官の私見にとどまるものと解される。なお、本件については、県知事が市長であった時期に本件事業の計画が進められ、エコシティの代表者が県知事の後援会関係者でもあったという事情があるようであり、実際には、注16が想定するような場合ではなかったようである(神山智美「補助金返還訴訟に関する一考察」富大経済論集62巻2号55頁〔315頁〕、前掲田中評釈233頁参照)。
 本判決が違法行為の転換を認めた事例として重要な意義を有するものであることは異論のないところである。もっとも、先述のとおり、本判決が違法行為の転換の要件等についての一般論を展開しない事例判決であり、本解説でもこの点の詳しい説明がなされていないことからすると、違法行為の転換の要件やその充足判断のあり方等については今後も議論が継続することになろう。

4 全体コメント

  本判決が違法行為の転換を認めたこと及びその理由付けについて特段の異論は見られないようである。本解説の内容も、本判決の判示の背後にある考え方を説明するものとして特に問題とすべき点はないものと思われる。違法行為の転換の要件等については、本判決の理解のためにもう少し詳しい解説が欲しかったところであるが、本判決が一般論を展開しない事例判決の形式を採るものであることからすると、その点もやむを得ないものと考える。

(参考文献)

本文に掲記したほか、本判決の評釈として、以下のものを参照した。
 徳本広孝・法学教室490号146頁
 山本未来・法学セミナー799号135頁
 田中良弘・判例秘書ジャーナル文献番号HJ100125
 江原勲=榎本洋一・判例地方自治478号4頁
 羽根一成・自治体法務研究67号79頁
 船渡康平・令和3年重要判例解説(ジュリスト臨時増刊1570号)40頁

(2022年5月17日脱稿)



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